差別・偏見は無くならないのか?  ~進化心理学の側面から考える~

 「差別・偏見」とは一体何でしょうか? 進化心理学的に解釈すれば、我々が石器時代の環境に適応した結果であり、ヒューリスティクス(直観)のみに頼った場合のリスク認知バイアスが大いに影響しています。「差別・偏見」を理解するためには、ますこのリスク認知バイアスを理解する必要があります。
リスク認知バイアスを細かく分析すると、「恐ろしさ」「未知性」の増大と「なじみ」「理解」の不足に分けられます。特に「なじみ」「理解」に関しては、進化心理学の一般的な説であるエラーマネジメント理論で解釈可能で、それは対象物が危険であるか否か不確実の場合、危険なものを危険でないと間違えるより、危険でないものを危険と間違える方が生存上有利なため、リスク回避的な判断を下す性向が進化した、という理論です。
この理論から、「なじみ」が無い、「理解」できないという状態は、対象物が危険であるか否かが不確実である状態に対応し、エラーマネジメント理論と整合します。
「差別・偏見」を無くす1つの方法として、未知の他者との接触を意識的に心掛け、類似点や相違点を理解する機会、コミュニケーションを増やす事で、恐怖心を和らげることができます。しかし、それは容易なことではありません。
では、「医療・福祉・介護」に従事する私たちにできることはあるのでしょうか?
例えば、障害者差別問題を考えるときに、障害者と関わりが深く、よく知っている「医療・福祉・介護」関係者が差別と偏見のリスクを減らすための貢献ができるはずです。
「未知性」は「恐怖」を生み、「恐怖」は「差別・偏見」を誘因する。私たちにできることは、学術的・科学的知見から、問題の本質を見抜く知性を養うことだと思います。