「蚊取り線香」「プール」「マドレーヌと紅茶」

~あなたが匂いで蘇る記憶は?~

今回は匂いのお話です。匂いで思い出すのは、夏休みにユウガオの果実を紐状にして天日干しされている、その場所から離れて皮や芯が放置され、いわゆる「腐敗」した匂い。その強烈な匂いは忘れようにも忘れられず、時空を超えて私の幼かったころの記憶を呼び覚まします。下記プルースト効果とは違うかも知れませんが、当然ながら名古屋でその匂いを嗅ぐことは無く、懐かしい(臭い?)思い出の匂いです。

匂いは、嗅いだ瞬間に、あなたを幼かった頃に連れ戻してくれたりします。なぜ記憶は匂いがきっかけとなって思い出されるのか? それは視覚、聴覚、味覚、触覚と嗅覚で、匂いを感じる過程に差があるからです。嗅覚以外の感覚はすべて視床と繋がっていますが、嗅覚は違います。鼻に入ってきた匂いは、鼻の内部から脳の下部にそってある嗅球で最初に処理されます。嗅球は、感情と記憶に強く関与している脳の2つの領域「扁桃体」と「海馬」と直接繋がっています。一方で、視覚、聴覚、触覚の情報は、脳のこの領域を通っていません。だから、嗅覚は他の感覚よりも、感情と記憶を呼び起こしやすくなっているのでしょう。

アルツハイマー型認知症では記憶を司る海馬の神経細胞が減少することをきっかけに、徐々に萎縮が進行しますが、海馬より先に脳の外側の嗅覚に関わる嗅内皮質が侵されることが分かってきました。また、認知症の重症度と嗅覚障害にも相関関係がみられます。

近年、認知機能改善と香りの効果が期待されており、嗅覚のトレーニングが認知症改善に繋がるかもしれません。当法人では、レクリエーションの一環として、線香を用いた「匂いレク」の開発および導入を検討中であり、ご利用者様のQOL改善のための試みを行っております。