メイヤロフによれば、「他者をケアするとは、そのもっとも深い意味において、そのひとの成長と自己実現を助けることである」と述べております。メイヤロフはケアの成果やされるものよりも、ケアをする側の態度・行動を考察しました。それはケアする側・される側の関係性が対等ではないので、ケアする側の態度が問題とならざるを得ない、と考えました。

その上で、ケアをする側・される側には重大な相違があるが、他者が成長するのを助けることには共通のパターンがあると考えました。ここでは、ケアされる対象が成長するのは価値あることであり、それを必要としていることがケアの問題の前提となっているといえます。メイヤロフはまた、ケアにおいて他者は、私の延長として、しかし独立した存在であり、成長する必要をもったものと位置付けています。すなわち他者はあくまでも他者ですが、ケアをつうじて自己と密接に結びつく。そして、人はケアを通じて他者の成長や自己実現に専心する。他者の成長を助けるようにケアすることは、他者の必要に応じることであると同時に、ケアする人自身の幸福とも結びつくと考えました。

メイヤロフの言及から学ぶべきことは、ケアを通じてケアする側にどんな影響があるかということです。それが、ケアする側の「自己実現」に集約されるであろうと。「自己実現」はマズローの5段階欲求説における「最上位」の欲求であり、人としての最高の価値ある動機になり得ます。そうであるならば、ケアする仕事(介護を主に、看護を含めた医療職全般、広義には教育等様々な職種も含まれる)が自己実現を達成するための最適な仕事の1つであり、自己実現を感じながらケアすることが、本来のあるべき「ケアの本質」であろうと考察されます。